サプライチェーンにおいて気候変動に配慮した契約条項を盛り込むには

近年気候変動に配慮した契約条項がますます一般的になりつつあり、企業はこれらの条項がもたらす複雑さに注意する必要があります。

多くの企業がサプライヤーとの契約において気候変動に配慮した条項を採用するようになるにつれ、温室効果ガス(GHG)排出の目標や誓約を公に実施することや、気候関連用語の標準化が進むなどいくつかの項目が重要な役割を果たすようになっています。

これらの条項を追加することにより、多くの新しい概念、用語の導入、実務的影響が生じ、契約書の作成とレビューのプロセスがより複雑になる可能性があることを企業は認識しておく必要があります。

物品売買契約などの契約において、気候変動に配慮した条項の起草や見直しを行う際には、以下2つの基本的な問題があります。

第一に、当事者は、当該条項の強制力 を検討しなければなりません。

第二に、当事者は、 当該条項が契約の他の部分とうまく整合するように起草しなければなりません。

気候変動に配慮した条項の強制力

気候変動条項を起草・検討する場合、弁護士はまずその執行可能性を検討しなければならなりません。例えば当事者は、損害賠償条項のような独自の契約上の救済手段を定める気候変動対策条項に注意を払う必要があります。損害賠償条項とは条項で定められた種類の違反に対して、違反者に所定の金額を支払うことを要求するものです。所定の金額は固定額や、所定の計算式に基づく金額であったりします。

損害賠償条項は、当事者の懲罰的な意図ではなく、補償的な意図を反映している場合にのみ強制力を持ちます。これらの条項の主な目的は違反者を罰することではなく、損害を被った者への補償でなければなりません。つまり、気候変動に配慮した損害賠償条項で、被害者のお気に入りの環境NPOへの支払いを要求するもの(被害者に直接ではなく)は、強制力を持たない可能性があるということです。


契約書に新しい条項を追加する前に、弁護士はまずその条項が契約書の既存の条項と、どの程度調和しているかを確認する必要があります。


また、損害賠償条項は一般的に、損害賠償が特定の種類の違反に対する唯一の救済策であることを条項が明記している必要があります。

契約の一貫性

契約書に新しい条項を追加する前に弁護士はまず、その条項が契約書の既存の条項とどの程度調和しているかを確認する必要があります。例えば多くの契約書には、相手方が契約に違反した場合に当事者が契約を解除することができる一般的な解除条項を含んでいます。この条項は、通常解約のトリガーとなる事象の種類に応じて、異なる通知、対処期間、その他の要件を含むように調整されています。契約違反に加え、当事者の支払不能や支配権の変更なども含まれる場合があります。

広範に起草された一般的な契約解除条項は、通常、条項内で解除事由としてより明確に規定されていない契約違反を全て捕捉するための包括的な文言を含みます。従い、広範に作成された契約解除条項の多くは、気候変動に配慮した新たな義務の違反を既にカバーしている可能性があります。

一般的な契約解除条項に加えて、気候変動に配慮した義務違反に対する早期解除のための専用条項が含まれている場合、気候変動関連の違反が一般条項から明確に除外され ていない限り、どちらの条項が適用されるのかが不明確になり問題が生じる可能性があります。

気候変動に配慮した条項と他の条項を徹底的に検討し比較することでこれらの問題を発見することができるでしょう。実際、契約書に以下項目が含まれている場合、意図しない矛盾が発生する可能性があります。

・様々な種類の違反が発生したかを判断するための基準を設ける。例えば、供給者の納品義務違反については重要性の認定を行うが、気候配慮義務違反については認定しない、というような契約である。

・一般的な責任制限条項に加えて、気候変動対策義務違反に対して回復可能な損害賠償の種類や額を制限することを目的とする専用の責任制限条項。

・一般的な補償規定に加え、気候変動に配慮した義務違反に対する専用の補償規定を設ける。

・一般的な価格調整条項に加えて、 気候変動に関連する事象を起因とする特別な価格調整条項。

サプライチェーンに関する契約において気候変動に配慮した条項が一般的になるにつれ、これらの条項を追加することで契約書の作成や審査が厳しくなることを認識し、そのための準備を今からしておく必要があります。


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