小売製造業におけるグローバルサプライチェーンリスクの高まり

コロナ禍によって悪化した小売製造業のグローバルサプライチェーンにおける人権侵害の特定とその阻止

サプライチェーンにおけるセキュリティ問題は、過去数十年の間に拡大し、根強く残っている問題です。世界的なコロナ禍は、グローバルサプライチェーンにおける弱点や 人権侵害の可能性を高めました。

セキュリティリスクと人権侵害

人権侵害- 人身取引の一種である強制労働や現代の奴隷制度など – は、すべてとは言わないまでも、ほとんどの生産部門におけるサプライチェーンのあらゆる段階で見られます。建設、漁業、農業、食品、衣料・繊維、履物など、すべてが虐待や搾取の対象になっています。さらに、強制労働は安全性の欠如、無報酬労働を含む劣悪な労働・生活環境、債務束縛、弱い立場の労働者に対する暴力・詐欺・強制の行使を伴うことが多く見られます。これには残念ながら児童労働も含まれます。

特に小売製造業は、その取引のおよそ7割を人権侵害が蔓延している国で生産することが多いファストファッションビジネスによって占めていたのです。例えば、2013年のバングラデシュのラナプラザ衣料品工場の陥落やその他の同様の労働者の権利に関する出来事は、これらの国々、特に世界最大の低コスト製造市場および輸出国である南アジアの衣料品労働者が直面する状況に世界を驚かせたのです。こうした非倫理的な行為にスポットライトが当たったにもかかわらず、その後の9年間はほとんど変化していません。

さらに、こうした労働虐待は、世界経済を揺るがしたコロナ禍によって悪化し、不安定労働者、特に女性が最も大きな影響を受けることが多いのです。この種の労働者は、コロナ禍が続くにつれ、より大きな雇用不安を抱え、より不規則な労働条件やハラスメントを受け入れなければならなくなりました。

残念ながら、この状況から逃れようとする労働者は、債務の束縛など、より暗い現代奴隷制の虐待の罠にはまる可能性があります。また、人身売買業者から脅されて警察に通報するのが怖い、言葉の壁がありそう、自分の権利や支援を求める場所についての情報がない、といった課題がさらなる苦難をもたらす可能性があります。

どこから始めるべき?

大手グローバル衣料品チェーンは業務の効率化のため、外注採用によりサプライヤーの選定や生産組織の編成をティア1リードサプライヤーに委ねる傾向があります。このティア1サプライヤーとは、小売企業に直接供給するサプライヤーです。そして、ティア1が生産、組み立て、その他の関連作業を外注または下請けするのが下層サプライヤーです。このような重層的なやり方は、サプライチェーンの大幅な成長を可能にしますが、大手衣料品チェーンにとっては、一次サプライヤーの生産者から最終製品の販売者に至るまで、生産に関わる当事者間の取引を正確にマッピングすることが困難な状況にあります。

そのため、サプライチェーンの多くの部分が見えないままになっています。バリューチェーン全体の透明性を求めることは 多国籍企業にとって大きな課題です。 多国籍企業は現在、強制労働に関する疑惑によって 厳しい目を向けられています。

より厳格な透明性を高めるための努力は、 買い手と供給者の間に契約があり、定期的な契約締結により信頼関係を構築すること、また信頼できる情報を共有することができれば、実現できるでしょう。さらに、労働監督官(より頻繁な調査や 監査を含む)および労働組合は、労使慣行に関する可視性と監視を強化します。これらすべての関係者が連携することで、適正評価(デューデリジェンス)の実施と行動規範の遵守を強化することができます。しかし、依然としてガバナンスのギャップは残ります。

政府および企業

政府はしばしば、人身売買を移民や犯罪の観点からのみ対処しようとするため、大きな課題に直面することがあります。不安定な労働者がその労働環境で直面する日常的な虐待は、気づかれないことが多いのです。

しかし、こうした日常的な労働から、労働者が人身売買や奴隷制の犠牲者になる可能性があります。こうした闇の活動は、グローバルなサプライチェーンの中で大きくなるのです。実際、人身売買や奴隷制と戦い、その連鎖を断ち切るためには、このような大きな背景の中で把握される必要があるのです。

例えば、個々の人身売買のケースに介入するのではなく、各国は虐待システム全体に対処すべきです。より重要なことは、各国がコロナ禍後の経済を活性化させるために、労働者の権利をよりもろくすることに抵抗することです。

労働を組織化し、労働者の条件を規制し、企業の刑事・民事責任を追及する上で、特に海外で起きている犯罪については、各国政府が重要な役割を果たすことができます。実際、中国のグローバルサプライチェーンにおける人権侵害の拡散に対して、米国がウイグル強制労働防止法(UFLPA)を制定し、海外企業の説明責任を強化するためのめざましい前進を遂げました。フランスでは、2017年に制定された「企業の監視義務法」によって、サプライチェーンガバナンスへの強いコミットメントが示されました。これに続いて、2015年にイギリスの現代奴隷法、2018年にオーストラリアの現代奴隷法が制定されました。共に検討中ですが、これらは労働者にさらなる保護を提供する可能性があります。最後に2022年に制定されたEUの新しい企業持続可能性適正評価(デューデリジェンス)指令は、EU内の企業およびEU企業と協働する海外市場の企業に対する人権侵害の企業制裁を示唆しています。

労働者の権利保護団体が多くの国で懸念に対処するための国内法を変更または確立するために闘う一方で、国際的な小売業者チェーンは、衣料産業のグローバル化の主要な推進者として、そのバリューチェーン全体で適正評価(デューデリジェンス)のプロセスを強化し、販売している商品が虐待または危険な条件の下で作られていないことを保証するために努力する必要があります。

エンハンスド・デューデリジェンス(EDD)レポート

ある個人の過去または現在の商取引の履歴を知らないまま、その個人との間で契約や取引関係を結んでしまうと、組織に重大なリスクがもたらされる可能性があります デューデリジェンスを強化するには、より深い情報で適切なコネクションを浮上させることが必要です。グローバルデータ、コンテンツに関する専門知識、テクノロジーを独自に融合させ、つながりやネットワークを明らかにするだけでなく、パターンや行動を意味付けるデューデリジェンスレポートをお届けします。

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