日英貿易の未来に備える

日英貿易協定の先行きが不透明な今、
戦略的優位に立てるのは積極的対策を講じた企業だけ

2021年1月1日、日英間の輸出入について定める規則が変わります。つまり、日英貿易に関わる企業が新体制に備えるための準備期間は、もう180日も残されていません。また、現時点において誰も未来が予測できない、という事実がさらに事態を複雑化させています。

その原因はブレグジットとその副次的な影響にあります。イギリスは2020年1月31日をもって欧州連合(EU)から離脱し、現在はEU関税同盟に加盟したまま、単独の市場でもあるという移行期間にあります。この移行期間は、2020年12月31日に終了しますが、イギリスがEUに加盟している間は(移行期間も含め)、欧州連合(EU)と日本の間で結ばれている経済連携協定(Economic Partnership Agreement;EPA)が日英貿易に適用されます。

イギリスは、EUにこの移行期間の延長を求めることもできましたが、これを拒否しました。つまり、日本を含め、すべての貿易相手国と自由貿易協定(Free Trade Agreement;FTA)を結ぶための期間が、半年も残されていないことを意味します。FTAを締結しなければ、その2国間の貿易には再び世界貿易機関(WTO)が定める規則が適用され、両国側の関税が上がることになります。

日本とイギリスの両国にとって、貿易協定は非常に重要です。2018年の2国間の貿易総額(商品とサービス)は296億ポンドでした。イギリスの国際通商省が発表した政策文書によると、日英間でFTAが結ばれれば、長期的に両国間の貿易額が152億ポンド増加する可能性があります。イギリスは、繊維、農業、サービスなどの分野におけるFTAのメリットに注目していますが、日本は、自動車、移住、投資など、既存の重要分野の持続と保護を重視するでしょう。

規則における不透明性

FTA交渉は、おそらく「原産地規則」の部分で行き詰ると考えられます。どのFTAでも最も複雑な部分です。原産地規則とは、価値が付加された割合に基づき、製品の原産地を定義するものです。

たとえば、EUと韓国の間で結ばれるFTAでは、価値の55%がEUで付加された自動車を「EU製」とします。ブレグジット以前は、この55%という基準を満たす限り、車両をイギリスで生産し、韓国に輸出する方が、関税を低く抑えることができました。この「55%」の価値の半分がイギリス以外のEU諸国で付加されていても問題ありません。

複数の国で価値が付加され、最終製品が出来上がるグローバルバリューチェーンの複雑性を踏まえると、イギリスのメーカーがEU外でこのような基準を満たすことは難しくなるかもしれません。つまり、日英貿易に関わる貿易関係者にとって、原産地規則の定義が極めて重要になります。

専門家によると、今までイギリス貿易は有機的にEUと連携してきたため、イギリスが日本などのEU以外の諸国とFTAを締結できるかは、イギリスがEUとの取引に合意できるかにかかっています。また、移行期間の終了日までに合意に至る必要性がある事実も、限定要因になり得ることを専門家は指摘しています。

つまり、日英貿易に関わる企業は、2021年中にさまざまな混乱に直面するかもしれません。新たな原産地規則や関税が適用される以外にも、変更があるでしょう。一部の専門家が提案するように、後日詳細を定めることを前提に、両国の政府が「スリムな」FTAを結ぶことに合意すれば、さらなる複雑性がもたらされる可能性があります。

自動化によるコスト削減

先日、トムソンロイターが実施した調査から、調査に参加した企業の3分の2以上は、コンプライアンス条件が複雑すぎるため、FTAを効果的に活用していないことが判明しました。これらの企業は、該当のプロセスにおいて、必要以上に数百万ドルの関税を支払っていました。

イギリスと日本が半年以内にFTAに合意するという最善のシナリオでも、欧州と日本間の貿易回廊に関わる企業の状況は複雑化します。これらの企業は、EUとの貿易協定とイギリスとの貿易協定という2種類の貿易協定に別々に対処しなければなりません。2021年1月1日までに合意に至らず、貿易にWHOの規則が適用されれば、煩雑性は指数関数的に悪化の一途を辿ることになるでしょう。

企業がこのような煩雑性に対処するためには、自社の基幹系情報システム(ERP)プラットフォームに包括的なFTAソリューションを統合することで、マニュアル作業を解消し、貿易管理を自動化するしかありません。

トムソンロイターのONESOURCE™ Free Trade Agreement (FTA) Managementは、FTAが定める原産国規則に基づく商品設定や、サプライチェーンにおけるコスト削減機会の特定をサポートするコンテンツベースのエキスパートシステムです。また、貿易コンプライアンス関連ワークフローを標準化し、マニュアル作業を解消し、最新の規制への準拠を確保することで、FTAガイドラインへの違反リスクを減らします。

構造が極めて複雑な部品表を統合し、クラウド対応システム上で、一度に複数の協定の原産地規則に対して素早く分析を行うことができます。さらに、エラーフリー宣言を自動的に自己認証できるため、罰則リスクが軽減されるだけでなく、将来的な優先権の主張に備え、監査証跡を作成します。

日英貿易に適用される規則と関税という点において、現時点で2021年の展望は開けていません。エキスパートシステムベースのFTA管理ソリューションを使用し、不透明な未来に備え、積極的な対策を講じた企業だけが、戦略的優位に立つことができるでしょう。

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