【メディア掲載】本記事は、『ビジネス法務』2026年9月号(2026年7月21日発行)に掲載されたタイアップ企画インタビューの転載記事です。
日本のプロフェッショナルは、AIの活用意識において世界でも高い水準にある一方、組織的な戦略づくりにはなお大きな伸びしろがある。そうした中、トムソン・ロイターは、長年培ってきた信頼性の高いコンテンツとテクノロジーを基盤に、実務で使えるAI の提供を加速させている。今回、Chief Operations and Technology Officer(最高執行・技術責任者)のカースティ・ロス氏に、同社が進める企業変革と、法務・コンプライアンス領域におけるAI活用の展望を聞いた。あわせて、トムソン・ロイター株式会社 代表取締役社長の三浦健人氏にも同席いただき、日本市場ならではの課題と期待について話をうかがった。
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―現在のご役職と担当領域について教えてください。
ロス氏:私はトムソン・ロイターのテクノロジー部門全体を統括しています。Westlaw やPractical Law に加え、税務・貿易分野の製品を担うエンジニアリングチーム、それらを支える技術・運用チームも管掌しています。
私の役割は、製品を販売した後も含めて、お客様がその品質、機能、サポートをどう感じるかという顧客体験全体に責任を持つことです。単に技術を導入するのではなく、その技術が実際にどのような価値として届くのかまで見届けることが、私の仕事だと考えています。
―日本市場をどう見ていますか。
ロス氏:今は日本を訪れるのに非常に興味深いタイミングです。トムソン・ロイターの調査では、日本では専門職の 90%超がAI を利用しており、2030 年までに、AI は我々の仕事に変革的な影響を与えると考えています。
さらに、日本の専門職は、世界の同業者と比べて、すでに仕事で AI 搭載テクノロジーを日常的に使用している割合がほぼ 2倍に上ります。日本のプロフェッショナルは、AI を仕事に取り入れることに非常に前向きであり、私たちにとっても大きな可能性のある市場だと見ています。
日本は品質や信頼性に対する要求水準が非常に高い市場でもありますが、だからこそ、実務で本当に使える AI の価値がより明確になるとも感じています。
―CoCounsel と Westlaw Japanの統合は、日本の法務実務にどのような意味を持ちますか。
ロス氏:トムソン・ロイターは 35 年以上にわたり AI を活用した研究を続けてきました。その蓄積の中で生まれた CoCounsel は、弁護士の業務を幅広く支える高信頼の法務特化型 AI テクノロジーです。従来は Westlaw で調査し、別のツールで論点整理や文案作成を行う場面も多かったと思いますが、今後はそれらを一つの流れの中で、よりシームレスに進められるようになります。調査、論点整理、ドラフト作成までを統合的に支援できることに大きな意味があります。
専門職の仕事は、単発の検索ではなく、一連の判断と作業の積み重ねで成り立っています。その流れ全体を支えられることが重要です。
三浦氏:これまでは、グローバルコンテンツと AI の組み合わせは、特にクロスボーダー案件を扱う弁護士に強い価値を発揮してきました。そこにWestlaw Japan という日本のコンテンツが統合されることで、日本の実務に根ざした形で CoCounsel をより活用していただけるようになると期待しています。
日本のお客様にとって、より身近で、より実務に直結した AI 活用の形が見えてくるのではないかと思います。


―他のAI サービスと比べた強みはどこにありますか。
ロス氏:基盤モデルは多くの場合、「十分に良い答え」を返してくれます。しかし、法務の世界では“ ほぼ正しい” では足りません。必要なのは、正確で、根拠を確認できることです。
トムソン・ロイターは、長年蓄積してきた専門性の高いコンテンツを基盤に、実務で信頼して使えるAI を提供しています。 CoCounsel では、回答の根拠となる引用や出典を確認できるため、利用者自身が妥当性を確かめることができ、ハルシネーションのリスクも抑えられます。
150 年以上にわたるコンテンツの蓄積が、私たちの大きな強みです。私たちが目指しているのは、単に速い AI ではなく、プロフェッショナルが安心して使える AI です。
―コンテンツ企業からテクノロジー企業への変革を、どのように進めてきたのでしょうか。
ロス氏:トムソン・ロイターは、ニュースだけでなく法務、税務、貿易の各分野で長年コンテンツを蓄積してきました。その上で高信頼性の専門家水準 AIテクノロジーに対する投資と革新を重ね、今では AIが製品のほぼすべての機能に入り込んでいます。
さらに重要なのは、AI が製品だけでなく、会社の働き方そのものを変えていることです。エンジニアは AI に支えられながらより迅速に開発を進め、一方、サポート部門でも同僚が AI を活用しながらより的確にお客様を支援しています。
AI は、製品の進化と企業運営の変革を同時に進める力になっています。技術を導入すること自体が目的なのではなく、会社全体のあり方を変えていくことが本質だと考えています。
―難しかったことは何ですか。
ロス氏:根本的に難しいのは、人は変化を好まないということです。だからこそ私たちはまず、何を AI で行い、何を行わないのかという倫理的な原則を明確にしました。お客様のデータのプライバシーと製品のセキュリティは最優先です。
そのうえで、チームには実験する文化を促しました。一定期間試し、うまくいけば広げる。うまくいかなければ早く止めて次に進む。大切なのは、失敗を恐れないことです。
倫理と安全性をしっかり土台に置いたうえで試行錯誤を重ねることが、変革を前に進める力になりました。
三浦氏:日本でも、変化を好まないという点は同じです。トムソン・ロイターは、信頼性の高い AI 技術を通じて、重要な意思決定や責任を伴う業務に携わるプロフェッショナルを支援しています。私たちは、卓越した専門知識、信頼性の高いコンテンツ、そして円滑に連携するワークフローを組み合わせることで、組織が変化に確信を持って対応できる環境を提供しています。
そのため、私たち自身も、サービスを提供する市場や業界の進化に対応するため、自社の変革を進めています。
―AI 導入を進める企業や法律事務所への助言をお願いします。
ロス氏:第一に、データと倫理の原則を最初にしっかり考えること。第二に、試してみる文化をつくること。第三に、実際に使ってみることです。
トムソン・ロイターでも、経営陣を含めてハッカソンを行い、AI を実際に試してきました。互いに学び合い、試しながら前進する文化が、AI 時代の組織には欠かせないと思います。
三浦氏:ロス氏の三点に尽きます。倫理観を保ちながら新しい技術を試していくことは簡単ではありませんが、そこにこそ大きな意味があります。私たちとしても、信頼できるコンテンツとテクノロジーを通じて、その挑戦を支えていきたいと考えています。