アジア太平洋地域の証券規制当局の幹部は、2022年の優先事項のトップが「サイバーリスクと業績回復」であることを明らかにしました。レギュラトリー・インテリジェンスの調査では、新型コロナウィルス感染症の世界的な流行からの景気回復は、懸念事項の3位に下がったことがわかりました。
前年からの変化として、環境・社会・ガバナンス(ESG)問題は、地域の規制優先事項のなかで2位に上昇しました。
その他の主要な優先事項には、デジタル資産、イノベーション、フィンテック、詐欺と金融犯罪、国境を越えた規制協力などが含まれます。
サイバーリスクへの対応
サイバーリスクと業績回復に注目が集まる背景には、各国が新型コロナウィルス感染症流行の財務的影響からの回復に目を向けていることが起因しています。このような状況下で規制当局は、回復しつつある証券市場に大混乱をもたらす大規模なサイバー障害の可能性について、ますます懸念を深めています。
最近、Javaを使用したコンピューターシステムに搭載されているLog4jソフトウェアの脆弱性が発見され、その脆弱性の深刻度から影響範囲の甚大さが懸念されており、緊急的処置の必要性が取り沙汰されています。脅威を未然に防ぐための定期的なセキュリティシステム保守はもちろん、不正アクセスされることを前提に、被害を最小限に押さえる対策なども必要です。
グリーンファイナンス
気候変動リスクやその他の環境問題が深刻化する中、グリーンファイナンスはアジア太平洋地域の証券規制当局にとって優先度の高い課題となっています。昨年末、香港はグリーン・ファイナンスの重要な拠点となる計画を明らかにしました。
グリーン&サステイナブル・ファイナンス・クロスエージェンシー・ステアリング・グループは、カーボンニュートラルに向けた投資の推進を支援するために、新たにグリーン・サステイナブル・ファイナンス・センター(GSF)を設立し、この活動を先導します。
証券先物取引委員会(SFC)の最高責任者であるアシュレイ・アルダー氏は、「香港は中国と欧米の投資家の橋渡し役として重要な役割を果たす立場にある」と述べ、「炭素取引は、低炭素経済への移行に必要な資金を動員するための重要な鍵となります。香港は世界最高水準の規制基準を持ち、国際的な資本移動と本土市場の橋渡しをする役割を担っているため、炭素市場の開発と拡大に向けた世界の取り組みに大きく貢献できる立場にある」と語りました。
不正行為や金融犯罪の脅威も、2022年の証券規制当局の高い関心事であることに変わりはありません。かつてドイツのフィンテック企業と称されたワイヤカード社の不正や、サプライチェーンファイナンスのグリーンシル社の破綻は、会計や監査の不祥事が証券市場の健全性や評判にもたらすリスクを浮き彫りにしました。
2022年の各地域証券規制当局の最優先事項
アジア太平洋地域の証券規制当局の幹部が、発表した2022年の最優先事項には、共通した課題が多く見受けられます。
香港証券先物取引委員会副主任 ジュリア・レオン氏
1. サイバーと運用の回復力
2. 環境・社会・ガバナンス(ESG)問題
3. 不正・金融犯罪
4. COVID-19 の復興と経済の回復
5. デジタルアセット、イノベーション、フィンテック
オーストラリア証券投資委員会コミッショナー キャシー・アーマー氏
1. サイバーリスク
2. 環境・社会・ガバナンス(ESG)問題
3. COVID-19の復興と経済の回復
4. デジタルアセット、イノベーション、フィンテック
5. 不正行為と金融犯罪
シンガポール金融管理局 副総裁 リム・トゥアン・リー氏
1. サイバーリスクとオペレーショナルレジリエンス
2. 環境・社会・ガバナンス(ESG)問題
3. デジタルアセット、イノベーション、フィンテック
4. 詐欺と金融犯罪
5. COVID-19の復興
タイ証券取引委員会事務総長ルンワディー・スワンモンコン氏
1. COVID-19の回復と経済の回復力
2. 環境・社会・ガバナンス(ESG)問題
3. デジタルアセット、イノベーション、フィンテック
4. 国境を越えた規制協力
5. 詐欺と金融犯罪
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